痩せてやる、と息巻いた彼。でも成果が見られませんでした

もう八年ほど前になりますが、私の職場に相撲取りのような体格をした同僚がおりまして、彼はいつも重たそうなお腹を大きく揺らしながら歩いていました。いったい彼が何キロあるのか興味がありましたが、それを知ることはできません。彼が自分の体重を恥ずかしがって言わないのではなく、自分自身でもそれを知る術がなかったのですね。お分かりでしょうか。
私の職場では毎年春と秋に健康診断が行われます。そこでのお話なのですが、私はちょうど彼の後ろで体重測定の順番を待っておりました。彼はゆっくりと体重計に乗ります。するといきなり、ピーッ、という音があたりに鳴り響き、係の人が慌てて彼を計測器からおろしたのです。何ごとが起きたのかと、回りの人たちはいっせいにこちらに視線を向けました。
「大変申し訳ありません。この計測器は百六十キロまでしか計れないんです」と。私は開いた口がふさがりませんでしたね。なんと彼の体重は百六十キロを超えていたんですから。今どき現役の力士でも、百六十キロを超える巨体の持ち主はそれほど多くないのでは。百六十キロ以下でも強い力士はけっこういますからね。そんなこともありましたから、彼の体重は謎のままなのです。
そんな体でしたから、彼は職場でも厄介者扱いです。彼が近づけば、「暑っ苦しい」とか「邪魔だ」とか、そんなひどい言葉があちこちから飛び交います。彼はもともと気の小さな男ではございませんでしたが、自分の体には劣等感を持っていたことは、どうやら事実のようです。あるとき彼は、「よし、痩せてやる!」と言い出したのです。これには誰もが驚きました。
彼がいったいどんなダイエットをしたのか分かりませんが、そのダイエット宣言をしてから半年過ぎても、彼はいっこうに痩せる気配がないのです。見ていると、平気で人の何倍もの食事をしています。これはおかしいと思い、「おいおい、ダイエット、どうしたんだ?」と訊きますと、彼は首を傾げてキョトンとしていました。まったく人騒がせな。

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